昔々、竹を取って暮らしている竹取の翁と妻、嫗が住んでいました。
ある日、翁は竹やぶで光り輝いている竹を見つけました。
近づいて切ってみると、中から可愛らしい女の子が出てきました。
翁は家へつれて帰り、自分たちの子供として大事に育てることにしました。

女の子はどんどん大きくなり、三ヶ月ほどでこの世のものとは思えないほど美しい年頃の娘になりました。
娘は、「なよ竹のかぐや姫」と名づけられました。

国中の男たちは、美しいかぐや姫と結婚したいと思い、竹取の翁の家に来ました。
しかし、かぐや姫は、結婚する気がありませんでしたので、多くの男たちは諦めて帰っていきました。ところが、五人の公達だけは諦めませんでした。
「私の望むものを持って来ることができた人と結婚します」
と、かぐや姫は条件を出しました。
残った五人の公達の一人には「仏の御石の鉢」を、別の一人には「蓬莱の玉の枝」など、一人一人に違ったものを持ってくるように言いましたが、どれも話でしか聞いたことのない珍しい宝ばかりでした。
五人は、それぞれ宝を探しに出かけて行きました。
しかし、一人は途中で諦め、一人は探している途中で命を落としてしまいました。
あとの三人は偽物の宝を持って行きましたが、すぐに嘘とばれてしまいました。

三年の月日が経ったころ、かぐや姫は月を見て物思いに耽るようになり、八月の満月が近づくにつれ月を見上げてはなぐ泣ぐむようになりました。
心配した翁が聞くと、
「自分はこの国の人ではなく、月の都の人なのです。十五夜の満月の夜には帰らなければならないのです。」
と、かぐや姫は言いました。

満月の夜、月からの使者が降りて来ました。翁と嫗をあとに帰って行きました。

「幼少の頃、初めてかぐや姫を読んだ時、姫君はどんなお顔をした人かしら？と想いを馳せたものです。大人になって、まさか自分が絵巻にするとは・・・。姫君の無私で純粋な心のありようは、女性としての憧れ、理想でもあります。」

（アートコレクター2009年12月より抜粋）